" /> 介護タクシーで感じた「その人らしさ」|認知症・混乱状態でも変わらない人生の時間【糸島】 | とんでも備忘録

「その人らしさに触れた、短い移動の時間」


たまたまご依頼いただいたお客様。

お迎えに伺うと、いつもとは違う空気が流れていました。
ベッドは低床にされ、ベッドサイドにはマット。
そしてご家族と思われる女性お二人が、その方が暴れないように体を押さえておられました。

そんな場面に怯む私ではなく、むしろ「この方らしさを少しでも引き出したい」という気持ちが湧いてきました。

まずはお名前を呼んでご挨拶。
聞こえているのか、反応はありません。
その後、看護師さんに心身機能面について軽く伺い、何となく見立てができたところで、先に車いすへ移っていただくことにしました。

動ける力は十分にある。
ただ、指示が通りにくく、とても混乱されているご様子でした。

ご本人に車いすへ移ることをお伝えし、協力していただきます。
立ち上がること自体は容易でも、車いすに腰掛けるための足の踏み替えや、「座る」という一連の動作がうまく連動しません。
声かけと誘導を重ねながら、なんとか車いすに乗っていただきました。

その後も落ち着かれないご様子だったため、手をつなぎ、とにかく話しかけながら、書類の手続きが終わるのを待ちました。

そして車には妹さまにも同乗していただきました。
短い移動距離ではありましたが、ご本人の好きな音楽を妹さまに伺うと、「ベートーヴェン」と即答。

その瞬間、一気にご本人への興味が湧き、いろいろとお話を伺いました。

昔はテニス部で、歌も好きで合唱団に所属。
公務員を退職された後は、ゴルフ三昧の日々。
年齢を重ね、ご家族の勧めで大きなBMWを手放し、軽自動車に乗り換えたものの、「軽自動車でゴルフに行くのが恥ずかしい」と、次第にゴルフからも足が遠のいてしまったそうです。

そこから不眠、心不全、認知面の低下。
個室に入院され、投薬による抑制がかかり、目を覚まさなくなったとのことでした。

けれど今回の入院中、お友だちがお見舞いに来られ、30分ほどゴルフの話をされたそうです。
すると、それをきっかけに元気を取り戻し、抑制が効かなくなったのだと。

ほんの短い移動時間でしたが、車内はベートーヴェンの音楽と妹さまのお話でにぎやかでした。
そしてご本人も、病院で見せておられたご様子とはまったく違い、とても穏やかに過ごされていました。

たまたま転院先には、私のいとこが作業療法士として勤務しており、個人的ではありますが申し送りをさせていただきました。
この出会いと、この小さなつながりが、何かひとつでもその方のプラスになりますように。


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